歯が痛くても、歯がなくても、おいしくしっかり食べることができません。
それでは健康で幸せな生活を送ることができません。
歯を長持ちさせることは、将来の健康で幸せな生活につながっています。
ではどうすれば、歯を長持ちさせることができるのでしょうか?
一番大切なことは、繰り返しの治療をさけることです。

繰り返しの治療を続けていると、少しずつ歯がなくなり、ついには抜くことになり、そこにブリッジを入れ、ブリッジが壊れて部分入れ歯になり、そして部分入れ歯のバネをかける歯が抜けて、最後には総入れ歯になります。
「むし歯になったから、今回は簡単に詰めておこう」
「むし歯になったから、今回は簡単にかぶせておこう」
「歯が一本抜けたから、今回は簡単にブリッジにしておこう」
「ブリッジが駄目になったから、もう年だから部分入れ歯にしておこう」
こういったことの繰り返しで、少しずつ、確実に、あなたのお口は総入れ歯に近づくのです。
どんなに良くできた総入れ歯でも、絶対に自分の歯にはかないません。
繰り返しの治療を避けるためには、できる限り最善の治療をすることです。
本当に最善の歯科治療とは?
歯科治療として、最善のものは、国際的にみても共通です。
本当に最善の歯科治療は、保険か自費かという考え方をしません。
保険と自費、この区分は日本独特のものです。
現に国際的な学会発表で日本の保険治療の症例が、治療そのものの素晴らしさで紹介されるのは、大変稀なことです。(この場合、術者の技量が素晴らしいのです)
現在の日本では、単純にコストの問題で、最善の治療の代用品として、保険治療が存在しています。
最善の歯科治療に必要な条件を、保険の診査・診断、時間、材料、方法のみで満たすのは、不可能なことです。
単純に最善の治療を行う、ということになると、結果として自費治療になります。
- 自費治療と保険治療の違いは4点、
- 1.「診査・診断・治療計画」と
- 2.「時間」と
- 3.「材料」と
- 4.「方法」です。
それぞれ、大きく異なるところがあります。
1.「診査・診断・治療計画」
保険の場合、診査には制限があります。
そのため、わかることは、むし歯と歯周病に限られます。
歯並び、咬みあわせ、美しさについては、大まかなことしかわかりません。
もともと保険治療は、むし歯の穴を埋めることと、歯周病の汚れを落とすこと、を主な目的としているので、歯並び、咬みあわせ、美しさ、といったお口の中の重要なことについては、最低限のことしか考えられておりません。
これでは、問題点の把握も、原因の特定も、治療計画も曖昧になってしまいます。
自費治療の場合、診査で、歯並び、咬みあわせ、美しさ、といった重要なことを調べることができます。
そうすることによって、全体的な、問題点の把握、原因の特定、治療計画の立案、が可能になります。
全体的な、問題点の把握、原因の特定、治療計画の立案ができると、どうなるのでしょうか?
悪くなったところに、銀歯やセラミックス、ブリッジやインプラント、何かを放り込む対症療法ではなく、悪くなった原因を根本的に解決できます。
部分的な、いきあたりばったりな治療ではなく、総合的な、将来のお口の変化を予測した治療が行えます。
その結果、繰り返しの治療を避け、歯を長持ちさせて、健康で幸せな生活を送ることができます。

全体的な、問題点の把握、原因の特定、治療計画の立案ができていなければ、材料にセラミックスやインプラントを使っていても、それは普通の保険治療と大した違いがありません。
単に高価な材料を使って穴を埋めているのと変わりありません。
それは自費治療ですが、本当に最善の歯科治療ではありません。
2.「時間」
保険治療のは治療費があらかじめ決められています。
しかし、この治療費をどうやって決めたのか疑問が出るほどに低コストに押さえられています。
WHOの統計では、日本の医療費の費用対効果は世界一ですが、それはこの低コスト構造があってこそです。
今では日本の歯科治療費は、東南アジアの歯科治療費より安いものもあります。
つまり保険治療の場合にはあらかじめ低コストに治療費が決められているので、どうしても限られた時間・費用の中での治療となってしまいます。
この治療には1000円の治療費、と決まっている場合には、1時間以上にもなるしっかりした診療はどうしても出来ません。
どうしても完全にはできないところや、本当は必要なステップの省略がでてきます。
それに対して自費治療の場合には、十分な治療費を頂いているので、十分な時間をかけて診療することが出来ます。
仮にその処置に1万円の治療費をかけて頂ければ、1時間じっくり診療することができます。
十分な時間をかけることができると、どうなるのでしょうか?
一つ一つの処置を丁寧に、入念に、確実にすることができます。
歯科医学的に必要なステップを省略することなく、完全にすることができます。
その結果、繰り返しの治療を避け、歯を長持ちさせて、
健康で幸せな生活を送ることができます。
十分な時間をかけず、本当は必要なステップを省略した自費治療は、
保険の治療と大差ありません。
というより、時間をかけた保険治療に劣ります。
それは自費治療ですが、本当に最善の歯科治療ではありません。
本当に最善の歯科治療には、十分な時間が必要です。
3.「材料」
材料には多くの種類があり、お口の中の状態によって、適材適所で用いることができます。
それらの使い分けには学術的に根拠のある基準に基づく必要があります。
審美的な要素、機能的な要素、生物学的な要素、構造力学的な要素、全てが考慮の対象になります。
自費治療であれば、こういった色々な条件を満たす最適な材料を選択することができます。
最適な材料を選択すると、どうなるのでしょうか?
限りなく歯にフィットした修復物は壊れにくく、微小な段差もできないので汚れもつきにくく、むし歯や歯周病のリスクを減らすことができます。
また、高度に咬み合わせを安定させることで、繰り返しかかる力に対して歯列全体で受け止めることができるので、お口の中全体が壊れにくくなります。
そして、決して変色しない美しい歯は、それだけで笑顔をより美しくします。
その結果、繰り返しの治療を避け、歯を長持ちさせて、健康で幸せな生活を送ることができます。

4.「方法」
方法としては、最良、と考えられるものは、その時の状態によっていくつかあります。
しかし、最良のものであればあるほど、時間や手間がかかることが多いのが現状です。
一部の例外として、とても短時間で仕上がるものもあります。
材料と方法、それぞれに違いはありますが、
一番大きく違うところは、プロビジョナルレストレーション(精密な仮歯)を使うかどうかです。
それもどれだけしっかりと使うか、調整していくか、に長期的に良い治療成績はかかっています。
材料が最高のものであっても、プロビジョナルレストレーション(精密な仮歯)を使わない、しっかりと調整しない、という方法で作られた修復物は、信頼性に欠けます。
なぜなら、人の体は変化するからです。
プロビジョナルレストレーション(精密な仮歯)を使い、しっかりと調整していくとどうなるのでしょうか?
お口の中は、高価なセラミックスやインプラントを放り込んだらいきなり治る、というものではありません。
体の他のところと同じように、少しずつ形を変えながら、ゆっくりと治癒し、最後に引き締まります。
歯ぐきや顎関節・咬み合わせは、治療期間中常に変化しています。
この変化が完全に収まり、健康であることが確認されてから、その状態に合わせて最終の修復物をつくることが大切です。
そうすることによって、健康な状態の体に合った、健康な状態を維持できる形の修復物を入れることができます。
もし、プロビジョナルレストレーション(精密な仮歯)を使わず、しっかりした調整もしなかったらどうなるのでしょうか?


それはまだ治癒の途中、ひどい場合には病気の状態の体にぴったり合った修復物を入れてしまうことです。
そのような修復物は、体の回復とともに体にとって調和しないものになり、治癒を妨げます。そして自覚はなくても病気の状態は続くでしょう。
ひどい場合には、最終の修復物が入った後で、歯ぐきや顎関節・咬み合わせが変化し、再び壊れてしまうこともあります。
そういったことになるにはそれなりに時間がかかるので、「またむし歯になった」「なんだか歯ぐきの調子が悪い」「咬み合わせが悪いから」といった言葉で済まされてしまいます。
しかし、プロビジョナルレストレーション(精密な仮歯)を使い、しっかりと調整していれば、それは避けられたことかもしれません。
お口の中は、最初は色々な病気の状態が複雑に絡み合っています。
プロビジョナルレストレーション(精密な仮歯)を使い、しっかりと調整していくことで、複雑な病気の状態を段階を踏んで、少しずつ確実に治癒させていきます。
まず悪いものを取り除き、
根の中や歯ぐきを治癒させ、
咬み合わせを安定させて、
美しさを磨いていきます。
これらのステップを踏むためには、プロビジョナルレストレーション(精密な仮歯)を使い、しっかりと調整していくことが不可欠です。
自費治療が自費治療であることの最大の意味は、プロビジョナルレストレーション(精密な仮歯)を使い、しっかりと調整していくことにある、と言い切ってよいと思います。

セラミックスやインプラントを使うことには多くの利点があります。
しかし、プロビジョナルレストレーション(精密な仮歯)をしっかりと調整しないのであれば、その自費治療、そのセラミックスやインプラントはまがいものです。
美しくもありませんし、機能的でもありません。
そこそこ美しいでしょうし、そこそこ咬めるでしょう。
しかし、本来の美しさも、本来の咬み合わせの安定も得られることはありません。
そのような治療の結果は、永続きしません。
それは自費治療ですが、本当に最善の歯科治療ではありません。
プロビジョナルレストレーション(精密な仮歯)を使い、しっかりと調整していくことで、繰り返しの治療を避け、歯を長持ちさせて、健康で幸せな生活を送ることができます。
歯科医療には治療の信頼性を示す言葉が2つあります。
「永続性」(Longevity)と
「予知性」(Predictability)です。
最善の歯科治療を目指すものにとっては、重い言葉です。
「永続きするのか?」「確実な将来が予知できるのか?」
という問いかけに、常に治療結果で答え続けなければならないからです。
「永続性」「予知性」という言葉を知らない、意識することのない歯科医師による自費治療は、最善の歯科治療ではありません。
それはただの利益追求の手段です。
その治療はあなたのためではなく、その歯科医師のために行われます。
- 信頼性の高い、長期的に良い治療成績を期待できる歯科治療とは、
- 1.高度な診査・診断・治療計画と、
- 2.十分な時間と、
- 3.適材適所な材料選択と、
- 4.ステップごとの最良の方法と、プロビジョナルレストレーション(精密な仮歯)をしっかりと調整していくという方法によって、
そしてそれらを可能にする深い知識と経験と熱意によって構成される、複雑で、奥深く、強靭で、美しい、ものです。
それは、まるで建築と同じように、芸術的で、科学的です。
| 保険治療 | 自費治療 | |
|---|---|---|
| 診査・診断 | 最低限の診査 (むし歯・歯周病のみ) |
高度な診査 (むし歯・歯周病はもとより歯並び・咬みあわせ・美しさまで) |
| 時間 | 不十分 | しっかりあるので丁寧にできる |
| 材料 | 制限あり | お口の中の状態に合わせて 様々な材料を適材適所に用いることができる |
| 方法 | プロビジョナルレストレーション (精密な仮歯)を使用しない |
プロビジョナルレストレーション (精密な仮歯)を使用 |
むし歯は、一度治したとしても、歯と修復物の境目から、再発することがあります。
歯周病は、一度おさまっても歯がある限り、常に再発の危険があります。
力のバランスがとれていなければ、歯も修復物も少しずつ壊れていきます。
治療と再発を繰り返していると、歯はそのたびに削ることで、少しずつなくなります。
(繰り返しの治療・リピートレストレーションサイクル)
ついに1本抜けてブリッジになり、ブリッジが壊れてダメになり、部分入れ歯になって
そしてバネのかかる歯が1本ずつ抜けていき、総入れ歯になっていくのです。
歯を長持ちさせて、健康で幸せな生活を送るためには、再発リスクを下げる必要があります。
では再発リスクを下げるためにはどうすればよいのか?
そのために、再発リスクを下げること。清潔であること。
そのために、清潔であること。
そのための素材、方法を使うこと。
本当に最善の歯科治療を行うには、これらのことを達成できる材料を使用しなくてはなりません。
再発リスクで問題になるのは、適合性、耐磨耗性、強度、咬合安定性、です。
適合性について
修復物は歯に装着するものです。そのため、修復物と歯との境目の隙間はセメントで埋めるようになります。
この境目の隙間が大きいと、そこにプラークがたまり、再びむし歯になります。(2次むし歯)
また、歯ぐきに近いところでは、歯周病の原因になります。
これを避けるためには、歯質と修復物とをできるだけぴったりと合わせることです。専門的には「適合性を高くする」といいます。
「適合性を高くする」ことは、歯科治療の基本中の基本です。そして永遠の課題でもあります。


そしてもう一つ大変重要なことがあります。適合性の高い修復物というものは、歯にぴったりとフィットしています。そのため、歯とほぼ一体化した状態になっており、力学的に安定しています。そのため長持ちします。
適合性が低い修復物では、歯と一体化しないため、微妙なぐらつき(マイクロムーブメント)を起こします。そのため、力学的に不安定になり、壊れやすくなります。
適合性を高くするには、
- ■素材を良いものにする、
- ■型取り(印象)の精度を上げる、
- ■技工精度を上げる、
といった方法があります。
素材について
ゴールドは最も適合性が高く、信頼性の高い素材です。

オールセラミックスはゴールドに次ぐ適合性があります。

これら2つは世界的に最も多く用いられ、標準的な素材となっています。
ハイブリッドセラミックスは多少適合性に劣ります。

保険で使われる金銀パラジウム合金は、適合性に劣ります。

適合性を高くするためには、ゴールドかオールセラミックスを使う必要があります。
適合性を最大限に上げるために、訓練された人間が、型取りの方法として歯肉圧排を確実に行い、型取りの材料としてシリコン印象材を使用して、素材としてゴールドやメタルセラミックスやオールセラミックスを使用して、熟練した技工士が、マイクロスコープ下で調整した、その修復物は、まるで歯に吸いつくような適合性を示します。
それは、その現象に実際ふれたことのない人間にはわからない世界であり、数値で示される科学としてよりも、むしろ芸術・アートの領域に属するものです。
耐磨耗性について
耐磨耗性が高いということは、咬みあわせが長期にわたって安定し、力学的トラブルが起きにくいため、長持ちします。
耐磨耗性が低いということは、その反対で咬みあわせが不安定になりやすく、力学的なトラブルが起こりやすくなり、ご自身の歯そのものが駄目になることもあります。
耐磨耗性は金属、セラミックスであれば問題はありません。
唯一、ハイブリッドセラミックスは磨り減る性質がありますので、少し耐磨耗性に劣ります。
強度について
強度が高い、ということは、修復物そのものが壊れにくいということです。
強度が低い、ということは、修復物そのものが壊れやすいということです。
修復物が壊れてしまうと、時間と手間をかけた修復物は作り直しになってしまいます。
簡単に作り直せる場合ならば、それほど問題になりません。しかし、作り直しがとても難しい大きな修復物の場合には、とても問題になります。
強度は金属がもっともあり、セラミックスがそれに続き、ハイブリッドセラミックスはやや劣ります。
咬合安定性について
咬みあわせが安定していると、力学的トラブルが起きにくいため、長持ちします。
咬みあわせが不安定だと、力学的なトラブルが起こりやすくなり、ご自身の歯そのものが駄目になることもあります。
咬みあわせを安定させる機能としては、セラミックスが最も高く、次にハイブリッドセラミックス、そして金属の順になります。
金属は強度は高いのですが、調整するときに削ることしかできないので、精密な咬みあわせを与えることが、難しいのです。

セラミック修復物の素晴らしさは、その美しさ、耐磨耗性、安全性、清潔さに加えて、高度に精密な咬みあわせを実現できる点にあります。
セラミック修復物は、調整するときに、削るだけではなく、足りないところを足すこともできます。
セラミック修復物と同じ精度の咬みあわせを金属修復物で実現することは、不可能ではないにしても、大変困難です。

図は、伊藤勇策ほか「ザ・プロビジョナルレストレーションズ」より引用
その他にも、健康で幸せな生活に関わる歯の素材選びの条件があります。
やはり、「美しい」ということはそれだけで一つの価値があります。
また、笑うことが楽しくなります。きれいな歯であれば、大切にしたくなります。見た目をよくするための再治療がなくなります。
「永続性」のある美しさは、セラミックスにしかありません。
プラスチックの歯は、時間とともに茶色く変色していきます。


酸化を起こしやすい材料を使うと、残っている歯の部分が腐食します。
全身にとっては、溶け出した金属イオンによる酸化・老化現象が進むといわれています

酸化が起こった場合、歯質は真っ黒に変色します

前歯のかぶせものの場合、歯と歯ぐきの境目が黒い線のように浮いて見えます
セラミックス、貴金属合金は酸化しません。
保険で使われる銀を含む合金は酸化します。

金属アレルギーは今ではかなり良く知られています。
意外と知られていないのが、歯科の金属によるアレルギーです。
肌の弱い方、色々なアレルギーのある方には、免疫応答に悪影響がある場合があるといわれています。その結果、全身の他の部位にも悪影響がおこる可能性が指摘されています。
セラミックスには金属アレルギーの可能性がありません。
その他の金属にはアレルギーの可能性があります。










