「若さは健康な口から」とはよく言われます。
顔の筋肉の70%は口周辺に集中していることから、よく咬めないと筋肉が衰え、皺やたるみになり、老いてみえます。
また咬む、話すというお口の機能が低下すると、筋力ばかりでなく脳への刺激や精神的満足感、唾液の分泌量が減退し、さらに老化に拍車をかけてしまいます。
どんなに高価な化粧品やサプリメントもお口の健康なしには効果がありません。
つまり咬むということはとても大切なことです。
そこで「咬み合わせ」について多くのお話がでてきます。
「咬み合わせが悪いから・・・」
「咬み合わせが大切ですよ・・・」
よく耳にするお話です。
「咬み合わせ」とはよく聞くお話であるのに、実のところよくわからない話になっています。
本当の意味で咬み合わせを理解している歯科医師も大変少ないのが現状です。
なぜ咬み合わせが大切なのでしょうか?
咬み合わせが悪いとどうなるのでしょうか?
咬み合わせが良いとどうなるのでしょうか?

ところがこれらのことについて議論が始まる前に、たいてい抜け落ちていることがあります。
それは「お口の中にどのような力がどれだけかかるのか」というとても単純な条件設定です。
この条件設定なしに、「咬み合わせ」という形態・構造の話をするのは無意味に思えます。
そして信じられないことに、お口の中にかかる力は人によっては単純にいうと10倍くらいの個人差があります。
ほとんどの方は「お口の中にかかる力」というと「食事のときに咬むこと」を思い浮かべます。
ところが、それ以外にもお口の中にはそれよりはるかに大きな力がかかることがあり、その力は歯・歯ぐき・顎関節や歯科治療の修復物をこわしてしまいます。
そこでまず、お口の中にかかる力(加圧要素)についてお話した後に、
どうやってその力を受け止めるか?という咬み合わせ(受圧要素)のお話に移ることにします。
お口の中にかかる力というのは、実は歯科治療にとって大変重要な意味を持っています。
歯を失くしてしまう原因としてよく知られているのは
①むし歯 と ②歯周病 です。
しかしあまり知られていませんが、もう一つ大きな原因があります。
それは ③過剰な力 です。
何度治してもすぐ詰め物が取れてしまうことはないでしょうか?
治療した歯が欠けたり折れたりしてしまうことはないでしょうか?

もしかするとそれらの原因は単なるむし歯ではなく、無意識のうちにしてしまう歯ぎしり・くいしばりによる過剰な力なのかもしれません。
何かをしているとき、無意識に歯を咬み合せていないでしょうか?
朝起きたとき、顎の周りが疲れてはいないでしょうか?
歯ぎしりは寝ている時にギリギリと歯をこすり合わせることです。
意外なことに音がしないことの方が多いです。

そして、くいしばりは寝ている時だけでなく、仕事・家事・勉強中など昼間でも無意識に歯をグッとかみしめることです。

歯ぎしりもくいしばりも、もともと習慣・癖なのですが、最近の研究では無意識レベルでのストレス解消と深い関係があるといわれています。
このとき、大脳の深いところで古い本能的な活動を司る脳のエリアが活動していることが確認されています。
ある研究では90%の人は何らかの歯ぎしり・くいしばりをするというデータもあります。
つまり人は歯ぎしり・くいしばりをする生き物なのです。
しかし、人に指摘されない限り、自分で気づく方はあまりいません。
なぜ歯ぎしり・くいしばりが問題になるのでしょうか?
歯ぎしり・くいしばりによる過剰な力は、知らないうちに歯を傷め、治療してもすぐに壊れたりと、お口の中の健康にとても大きな影響があります。
普通の食事のときにかかる力は体重に近く、60kg以上になります。
ですが、リズミカルに咬む運動の行われる食事のときにはほとんど歯は接触しません。
歯同士の接触時間は一日三食あわせても20分程度にしかなりません。

しかし、夜中のくいしばりは無意識に行われるため、その力は最大でその6倍にもなります。
ご飯を食べるときに一口一口思いっきりくいしばる人はいませんが、寝ているときは意識のブレーキが効かず、自分が普段出せる以上の力で、数時間にもわたって噛みしめることがあります。
(McNeill C : Science and Practice of Occlusion. Quintessence,1997)
また、骨格が大きい人は顎の骨についている筋肉も大きいので、小柄な人の2倍近い力を出します。
「割れた」「取れた」「壊れた」というトラブルは一見突然起こるようですが、実は無理な力が繰り返しかかることが続いたために起こるトラブルです。

「金属疲労」という現象がありますが、これに似ています。
繰り返しの力がかかると頑丈な金属でもある日突然折れてしまいます。
しかもむし歯や歯周病があるところに繰り返しの力がかかり続ければ、さらに複雑に、しかも急速に壊れていきます。
繰り返しの過剰な力で何が起きるのでしょうか?
歯が磨耗する
歯ぎしりの強い力で、歯は少しずつ磨り減っていきます。
歯が平らになってくると、咬み合わせが不安定になり、食べるときの顎の運動も牛のように横方向に近くなり、さらに歯がこわれていきます。

歯の根元のところが傷んで楔形に欠けてしまう。
強い力がかかり続けると、歯の表面のエナメル質に細かいヒビが入ります。
歯ぎしりによる横方向の力が集中する歯の根元のあたりはエナメル質がとても薄いので、これらのヒビが拡がるとエナメル質はどんどん剥がれ落ちていきます。
すると剥がれ落ちたエナメル質の部分がつながって、楔(くさび)の形になります。
エナメル質が剥がれ落ちたところは軟らかく酸に弱い象牙質が出てしまいます。
すると冷たいものがしみたり、むし歯になりやすくなります。

歯槽骨が溶けて歯周病が急速に進む
ほとんどの歯周病は、細菌の感染によって歯の周りの歯槽骨が全体的に少しずつ溶けて吸収していきます。

こういうタイプの歯周病は年齢とともに少しずつ進行することが一般的で、通常の歯周病治療で進行をかなり食い止めることができます。

ところが細菌の感染があるところに過剰な力がかかると、歯周病が急速に進行します。
過剰な力のかかっているところの歯槽骨が特別に吸収し、通常の歯周病治療では進行を止めることができません。
この場合はお口の中の力のコントロールが必要です。
詰め物や冠が繰り返し壊れる
何度治療しても、何回やり直しても、繰り返し取れたり壊れたりします。
きちんと作っていないものであれば論外ですが、きちんとした形のものでも過剰な力が繰り返しかかれば壊れます。
その繰り返しの結果、歯を抜くことになります。
過剰な力をそのままにして、そこにインプラントをすると、咬み合わせる反対側の歯が壊れるか、顎がおかしくなります。

歯が折れる
あまりにも強い力が繰り返しかかると、歯でも折れます。
神経のある歯は粘り強いのでなかなかそういうことはありませんが、力があまりにも強い場合には折れることがあります。
神経を取った歯はもろくなっているので、過剰な力がかかって折れることはよくあります。
折れてしまった歯は現在では抜くしか治療法がありません。
過剰な力をそのままにして、そこにインプラントをすると、咬み合わせる反対側の歯が壊れるか、顎がおかしくなります。ときにはインプラントそのものも壊れることがあります。

歯ぎしり・くいしばりを見分けるために
歯ぎしりやくいしばりは無意識のうちにしてしまうものなので、ほとんどの方は自分がしているという自覚がありません。
ほとんどの歯ぎしり・くいしばりは音がしませんし、目で見ることもありません。
ですので、ほとんどの人が、「歯ぎしり・くいしばりをしていませんか?」と聞くと「いいえ、していません」とお答えになります。
これらの過剰な力は目に見えないものですが、経験的に歯科医師はお口の中に過剰な力がかかっている場合に現れるサインを知っています。
以下のサインが現れている方は、お口の中に過剰な力がかかっている可能性があります。
- ● 歯の咬む面が磨り減っている
- ● 歯の根元のところが傷んで楔形に欠けている
- ● 歯ぐきが部分的に下がっている
- ● むし歯もないのに冷たいものや熱いものがしみる
- ● 歯を咬み合わせて横に歯ぎしりのようにズラすと、歯の磨り減った箇所がぴったりと一致する
- ● 指を歯に当てて歯を咬み合わせて、繰り返し横に歯ぎしりのようにズラすと、歯がぐらぐらする
- ● 頬の内側や舌の横に、歯に押し付けたような跡がある
- ● 詰め物や冠が繰り返し壊れる
- ● 歯が折れる
- ● 歯周病の進行がある箇所だけひどい。治りが悪い。
- ● 口が開きにくい
- ● 顎が痛くなる
- ● 頭痛・肩こり・腰痛がある
どんなときに歯ぎしり・くいしばりをしているのでしょうか?
上下の歯は、いつも咬み合わせているのが普通だと思っている方がかなりいらっしゃいますが、これは間違いです。

もし歯がいつも咬み合っているなら、それはくいしばりの癖があるということになります。
上下の歯は、食事のときや唾液を飲み込む時以外、離れているのが普通です。
そして夜寝ているときは無意識になるため、歯ぎしり・くいしばりが起こっているかどうかはなかなかわかりません。先ほどのお口の中のサインから読み取っていきます。
どうすれば歯ぎしり・くいしばりを止められるのでしょうか?
まず、昼間はこの「歯を咬み合わせる癖に気づく」ことが大切です。
繰り返し意識をして、気づいていくこと。実はこれ以外に方法はありません。
「姿勢が悪い」と言われたら、繰り返し意識して姿勢を正しくしていくのと同じです。簡単ですけれども難しく、長い時間がかかります。
そして昼間にくいしばりの癖に気づくことができると、夜寝ているときの歯ぎしりも減ってきます。歯ぎしりをしたときに目が覚めることさえあります。
しかし、夜間の歯ぎしりというものは、脳のストレス解消のため、人間には必要なものなのだ、という学説もあるので、一律に悪者扱いもできません。
少なくなるにこしたことはないのですが、昼間のくいしばりとは違い、それだけで完全に止まるというものではありません。
そのため、歯がこわれたり、顎に悪い影響がでないために、薄くて小さなマウスピースを夜寝るときだけ使っていただくことがよくあります。
これによって歯ぎしり・くいしばりがなくなるわけではありませんが、歯ぎしり・くいしばりで歯が悪くなることがなくなります。
人によっては睡眠が深くなりよく眠れたり、肩こりがとれた方もいらっしゃいます。
当院で使用しているマウスピースの特徴
- ● 薄い。0.5mmと1.0mmのものあり。過剰な力の程度によって使い分けます。
- ● 小さい。通常の歯ぎしり対策用マウスピースの約半分の大きさです。学術的に根拠のある最小限の大きさに設定しています。
- ● 割れない。素材はペットボトルと同じです。お手入れも簡単です。

95%の方はこの小さなタイプのマウスピースで良い結果が得られます。
歯ぎしり・くいしばり対策として、よく使用されるマウスピースの問題点
- ● 分厚い。本来の咬み合わせの位置から大きくズレる危険性あり。
- ● 大きい。違和感が大きくて眠れない。使わなくなるので効果なし。
- ● 乾燥すると割れるため、常に水に漬けておく必要あり。
しかし、残り5%の方、歯周病が進行して歯が動きやすい方や顎の関節が不安定になっている方は、残念ながら大きなマウスピースを使用していただかなくてはなりません

使用してはいけないマウスピース
- ● 柔らかいタイプ。咬み合わせの調整が不可能で、しかも、くいしばりを悪化させます。
これまでのお話で、いかに過剰な力がお口の中を壊していくのかがよくお分かりいただけたと思います。
ここでもう一度整理しますと、
今までお話した過剰な力とは、歯ぎしり・くいしばりによるもので、これは「咬み癖」です。
これからお話する「咬み合わせ」とは形や構造という力を受け止めるものです。
それではこの過剰な力がかかることのあるお口の中で、
なぜ咬み合わせが大切なのでしょうか?
咬み合わせが悪いとどうなるのでしょうか?
咬み合わせが良いとどうなるのでしょうか?

咬み合わせとは、簡単にいうと、歯同士がたくさん集まって、お口を閉じたときにお互いが当たっている状態をイメージしていただくとわかりやすいかもしれません。

もう少し詳しくみていくと、
歯は左右対称に7種類あり、すべて形が異なり役割も違います。
その歯が上下で14対の咬み合わせをつくります。
そして左右の耳の前に顎の関節があり、下顎の骨は左右でつながって1つになっています。
この形は、人体で最も大きく、そして複雑な関節を構成しているとみることができます。
つまり歯からなる14対の小関節と、左右の顎関節からなる2対の大関節との複合関節です。
実際には歯を顎骨に固定している歯根膜(28対)も関節に含めるとさらに複雑さは増します。

歯科医学がなぜ他の医学と区別されて研究・教育がなされているかというと、この複雑きわまりない「咬み合わせ」と「人工物の生体への埋め込み」という点があるからだと言われています。
咬み合わせが悪くても問題の起きない方は多くいらっしゃいます。
そういう方に共通しているのは、お口の中に過剰な力が働いていないということです。
逆に咬み合わせに問題がないのに、色々な問題に見舞われる方に共通しているのは、お口の中に過剰な力が働いているということです。
このことは建物の構造と地震の関係に似ています。
地震のない地域では、それほど構造に気を使わなくても建物はこわれません。
それこそ日干し煉瓦であったり、細い柱であったりしても。
ところが日本のように地震の多い地域となると、建物を建てるときには十分な構造設計をして素材を厳選して、地震の力を受け止めたり、受け流したりする必要があります。しかし、それでもこわれるときはこわれます。
なぜ咬み合わせが大切かというと、
咬み合わせが悪いと大きな力が繰り返しかかったときにこわれるからです。
咬み合わせが良いとこわれる可能性が格段に低くなります。
ただ単に、ご飯を噛み潰せるだけでよいなら咬み合わせはとても簡単です。
問題は、それがいつまでこわれずにもつのか?ということです。
構造設計が正確で、良い素材を使った自動車はこわれませんが、
構造設計が不十分で、粗悪な素材を使った自動車は簡単にこわれます。
よく咬み合わせを重視しない歯科医師の方が挙げる反論に
「天然の歯並びをいくら研究しても、そのような咬み合わせはみられない。だから咬み合わせはそれほど重要ではない。」
というものがあります。
これらの方々は単純なことを見落としています。
天然の歯がきれいに問題なく残っている人々の咬み合わせをいくら調べても、歯がこわれた人々の参考にはなりません。
最初からお口の中にかかる力の条件が違うからです。
「アラビアでは日干し煉瓦の建物でも100年持つ!」
だからといって、日本でそんなもの建ててはいけません。
歯が大きくこわれ、なくなった人々は、
①むし歯 ②歯周病 ③過剰な力
のどれか、もしくは複数によって歯をなくしています。
①むし歯 と ②歯周病 だけで歯をなくしているのであれば、
確かにそれほど咬み合わせにこだわる必要はないでしょう。
しかし、 ③過剰な力 がかからない条件では、そもそも歯はそう簡単にはなくなりません。
歯がこわれ、なくなっていったのであれば、
③過剰な力 がかかっていた可能性も考えなくてはなりません。
少なくとも、なんらかの備えをしておくにこしたことはありません。
そしてこれから年齢を重ねていくうちに足腰が悪くなれば、誰でもお口の中に過剰な力がかかるようになります。
とても条件の悪いところに新しい咬み合わせを人工的に与えていくわけです。
そして人工の歯は天然の歯のように頑丈ではありません。
つまり人工の歯に与える咬み合わせは天然の歯の咬み合わせよりも精密にする必要があります。
そして誰しも、これ以上歯をなくしたり、苦労したいとは思っていません。
一度治したなら、できるだけ長く問題なく生活したいと思われています。
それを実現するためには
十分な構造設計をして
素材を厳選して、
お口の中の過剰な力を受け止めたり、受け流したりする必要があります。
良い咬み合わせとは
きれいで(審美)
食べやすくて(機能)
こわれなくて(構造力学)
みがきやすい(生物学的恒常性)
ものです
悪い咬み合わせとは
これらのうち、何かが欠けているものです。
咬み合わせを構成するものは、
歯、歯並び、顎骨、顎顔面の筋肉、顎関節、そしてそれらを統括する神経筋機構です。
そこで私達歯科医師は
これらを詳しく検査し、どうなっているのかを診断し、よりよい状態に改善します。
ここで役に立つのが、基礎資料から読み取った問題点です。
- 歯並びはどうなっているのでしょうか?
- 見た目だけではなくて、むし歯や歯周病や咬み合わせに影響しそうでしょうか?
- 歯ぐきは連続的に美しいカーブを描いているでしょうか?
- 歯を支える骨は連続的に美しいカーブを描いているでしょうか?
- すき間があいてきたり、歯がなくなったところはどうなっているでしょうか?
- 歯並びの形は上下で調和しているでしょうか?
- 上下の顎の位置や形は前後的・上下的・左右的に調和しているでしょうか?
- 上下の前歯の位置や形は前後的・上下的・左右的に調和しているでしょうか?
- 上下の奥歯の位置や形は前後的・上下的・左右的に調和しているでしょうか?
- 咬み合わせはどうなっているのでしょうか?
- 顎の位置は自然で無理のない状態でしょうか?
- 顎の形はどうでしょうか?左右対称でしょうか?それとも違いがあるのでしょうか?
- かみ合わせの高さはどうでしょうか?繰り返しの治療で低くなっていないでしょうか?不正確な修復で高くなっていないでしょうか?
- 前歯の位置と形は自然で機能的でしょうか?一見きれいに並んでいても、上下がきちんと咬んでいないことはないでしょうか?
- かみ合わせの基準面(occlusal plane)は自然で美しいカーブを描いているでしょうか?それとも、ところどころ不自然に曲がり、滑らかな顎の運動の邪魔をしていないでしょうか?
- 顎の運動は自然で滑らかなものでしょうか?不安定で、どこで咬んだらいいのかわからないことはないでしょうか?咬んでも咬み切れないことはないでしょうか?日中や夜寝るときに、歯をくいしばったりしていないでしょうか?歯をこすり合わせたりしているときはないでしょうか?よくみると、一部だけ歯がすりへったりしていないでしょうか?
- 奥歯の形は自然で機能的なものでしょうか?天然の歯がしっかり残っている人も、すりへって形が変わってきていないでしょうか?治療した歯が入っている人は、平らで咬みあわせても安定しない、動く時に抵抗の大きい歯が入っていないでしょうか?
これらのうち治療によって変更できるのは、
歯の形態、歯の位置、顎の形態(難易度高)、顎の位置です。
その他のものは、これらの変更にしたがって適応していくと考えられています。
そして咬み合わせを精密に改善することによって、これからの人生を幸せにしていくための一つの要素を差し上げることができます。
それはこれからの長い間、安心しておいしく食事ができるということです。
ここで「咬み合わせとは」という内容で全てを説明することは、
あまりにも膨大な内容なので不可能です。
ですが、なぜ咬み合わせが大切なのか?どういう意味で大切なのか?ということはお伝えできたのではないかと思います。
最後になりましたが、
よくいわれる全身と咬み合わせの関係です。

結論からいって、まだよくわかっていません。
咬み合わせを修正して、全身的な治らない症状が軽くなった、という数多くの報告がある一方で、信頼できる科学的な検証を行った文献は未だありません。
数多くの報告の中には、非常に疑わしいものも多く含まれています。
そしてそれらの中には明らかに商売のためになされている宣伝も多くあります。
また、信頼できる科学的な検証を論文で行うということですが、
咬み合わせだけでも多要素にわたる膨大なものであるのに、それに加えて全身状態となると、パラメーターが多すぎて、サンプル数を揃えての統計学的な分析は不可能に近いといえるでしょう。
少なくとも、かつて"Dentistry is Occlusion"と呼ばれた時代に、
AAOPでさえ顎関節症の治療に不可逆的な咬合治療を推奨し、その結果数多くの治療が不幸な結果に終わった歴史を考えると、全身状態の改善を目的とした咬合治療というものは厳に慎むべきものだと考えます。
そういった歴史の結果、一部の歯科医師に咬合・咬み合わせアレルギーのようなものがあるのも事実です。
しかし、何らかの歯科治療を必要としている人々に何らかの咬み合わせを与えなくてはならない以上、
そこで求められるものは
リスクを避けるということと
よりよい状態を追求するということのバランスを考え
慎重に行うべきでしょう。
以上のことから
我々が咬合・咬み合わせというものに手を加えるのは、
きれいで(審美)
食べやすくて(機能)
こわれなくて(構造力学)
みがきやすい(生物学的恒常性)
状態を達成する必要があるときに限るのではないかと思います。
その結果、副産物として全身状態が改善するのならば、それはそれで素晴らしいことだと思います。








